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火鷹…ヒュプノス…。
その名が、深く深く、私の心に刻まれた日だった………。
「…『キリカゼ』で、どうだ。」
「……はい?」
物思いにふけっていた私が火鷹様を見る。
若干照れているのか、顔と耳がほんのり赤い。
「だ…だから!お前は今から『霧風』と名乗れ。命令だ!」
「……………」
名前……名乗っていいんだ…。
…それは、私という存在を見つけてくれたみたいに思えて……。
「…気に入らないなら、自分で付けろ」
ブンブンッと頭を横に振り、下を向く。私は……、何年振りかの涙を流していた。
「……っ…あ、…あり…が……」
「何だ?人の目を見てハッキリと言え」
…それも、命令でしょうか?
「…ありがとう、ございます…火鷹様……ありがとう…」
「………。」
その時の火鷹様は、初めて見る表情で。
不器用に、微笑んだ…気がした。
「…この辺りから西の土地は、僕は行った事がない。霧風はあるか?」
「いいえ…ありません」
「来たいなら、来るがいい……一緒に。」
ーー…風が、吹いた。
「命令、ですか?」
「…命令だ。」
優しい風が、遠くまで吹き抜けていって。…自由に、見知らぬ地まで。
私もそんな風のように、なれるだろうか。
「火鷹様」
「何だ」
「火鷹様ってクールな振りして実は◯◯ですよね。その割りに◯◯◯は立派に◯◯で…」(※自主規制が働いております。)
「キ、霧…風………(白目)。」
爽やかに終われず、ちょっぴり挫けそうな火鷹であった。
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