第2章

9/27
前へ
/226ページ
次へ
10階にある社員食堂は、200人程度を収容出来るスペースがあり、食券制のシステムで、和・洋・中の一通りのメニューがそろっている。 熊切がおごってくれると言うので、遠慮と言うものを知らない小津は、大盛りカツカレーにナポリタンと食後のコーヒーまで食券を買っている。 俺と熊切、三谷さんは日替わり定食に決め、テレビの近くの席に陣取った。 時計を見ると、すでに午後2時になっており、昼食の時間帯を過ぎているにもかかわらず、壁に架けられた大型の液晶テレビの前には、まだ大勢の社員が集まり、食い入るようにニュースを見ている。 テレビは相変わらず、通常の番組を変更してニュースを流し続けているが、よくみると“若狹湾原発爆破テロ”のテロップが画面に流れている。 ニュースでは、関西電力の美浜原発と敦賀原発で自爆テロが発生し、火災と放射能漏れの影響で、多数の死傷者が出ており、若狹湾周囲50kmは立入禁止措置が実施されている。 また、警察の発表では、テロの実行犯は、北朝鮮から来た潜航艇の乗組員の可能性が高く、現在捜査中との事だった。 しかし爆破事件発生の直後、北朝鮮のスポークスマンは声明を発表し、被害者に哀悼の意を表明し、その爆破への関与を全面的に否定している。 さらにニュースの続報が続く。 〇北朝鮮から、謎の奇病の感染者と見られる数万の群集が、国境の38度線を突破、韓国軍国境警備隊がこれに発砲するも、双方に多数の死傷者が発生。 また、韓国国内でも首都ソウルを中心に感染者が発生。韓国大統領は全土に戒厳令を発令。 指揮権を在韓米軍に委譲。 〇世界中に展開する全米軍に対し、デフコン(警戒レベル)を警戒体制のレベル3から準戦時体制のレベル2を発令。 〇EU諸国も、イギリスを除くヨーロッパのほぼ全域で感染者が発生。大混乱に陥っている。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1346人が本棚に入れています
本棚に追加