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どれぐらいの時間、こうしてうずくまっていただろう。
ふと、腕のGショックのアラーム音に我に帰った俺は、デジタル表示されている時刻を目にして日没が近い事を知った。
…いつまでもこうしてはいられない。
…早く仕事を終わらせよう。
…日が暮れると危険だ。
ひとり呟くと、俺は痛む膝をかばうように緩慢な動作で立ち上がる。
そして自分の仕事に戻るべく、ボコボコに傷がつき、血と埃で汚れたランドクルーザーのバックゲートを開け、工具箱を取り出した。
…今日の目当ては食料と衣類だな。
ポケットから取り出した紙切れを見ながらひとり呟き、ジーンズの腰にぶち込んだニューナンブM60の回転式の弾倉に、弾薬が6発装填されている事を確認した。
今までになんども俺の命を救ってくれたこの拳銃は、頭から脳みそをはみ出し、右足が付け根から引きちぎられて、死体になっていた交番の若い警察官が手に握りしめていた物だ。
その拳銃で、生き延びる為に、俺は‘奴ら’を撃ちまくり、バレルは焼け付き、グリップは欠けてボロボロの廃品寸前になっている。
もう狙い通りに撃てる保証は…
…全く無い。
…今日は使う事は無いだろうが念のためだ。
もう一度拳銃を腰にぶち込み、右手には血のこびり付いたバールを軽く握り直す。
ボサボサで伸び放題の髪の毛を掻きむしりながら、ふと平和で退屈だった日々を思い出す。
…前に熱いシャワーを浴びたのはいつだっけな…。
…長い間まともに風呂すら入れてないからな。
俺は、そんな平和だった過去を忘れるように、一つ首を振ると、ずっしりと重い工具箱を担ぎ、冷凍食品メーカーと思われる看板のかかった巨大な建物のバックヤードに向かって重い足取りで歩いていった。
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