第1章

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また、病院からの中継では、伝染病に感染したと思われる患者の病状について、治療にあたった医師から説明がされていた。 白衣が血にまみれ、憔悴しきった顔の若い医師は、この伝染病は今までに症例の無い恐ろしい病気で、非常に感染力が強く、決して感染者、感染者の血液、排泄物に触れないようにと喉から声を振り絞るように語っていた。 「伝染病?暴徒?なんで暴動が起きてるんだ?どーなってんだ?!」 俺は思わず、声に出してテレビに向かって叫んだ。 しかし残念ながら、俺の安物のテレビには独り言に相槌をうってくれる機能が無いので、返答は当然無い。 次々と続報が入り、ニュースは終わる気配がなく延長を続けている。 俺は呆然とニュースを見続けながら、この事件と伝染病の事が妙に気になり出し、最近疎遠になりつつある彼女の伊丹美紀の携帯に電話してみた。 …トゥルル、トゥルル 「あ、俺、ニュース見た?」 「…知らない。明日朝早いからごめんね。」 ガチャ、…ツーツー… 付き合って三年、俺はもう28歳、美紀も27歳と、お互いに結婚は意識する年頃だが、俺が煮え切らない態度を取り続けるものだから、最近彼女の対応はみるみる冷たくなっている…。 まあ、彼女は大手広告代理店でバリバリ働くキャリア指向なんで仕方ないな。 全てにおいて仕事優先の彼女は、実は結婚には興味無いかも知れないしな。 俺はそう脳天気に気を取り直して、新潟の実家で暮らす両親に電話しようかと思いながらも、いろいろと考え、思い悩んでいるうちに、仕事の疲れからかそのまま眠り込んでしまった。
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