第1章

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翌朝、目が覚めると、時計は8時前を指していた。 しばらく呆然とした俺は、ふとスーツのまま眠ってしまった事に気付き、大急ぎで服を脱ぎすて、シャワーを浴び、スーツの上着と鞄を抱えて寮を飛び出した。 そして、遅刻ギリギリで会社に飛び込み、パソコンを起動し、メールをチェックした。 いつものように、こっそりブラウザを起動してインターネットのニュースを見ると、見出しは福井県の事件関連で埋め尽くされていた。 社内でもこのニュースの話題で持ち切りになってるようで、普段の朝とは違い、問い合わせの電話とFAXが飛び交っていた。 総務課の連中は、福井市の支店に所属する社員と、その家族の安否確認や、現地視察の準備に忙殺されているようで、殺気だっている。 いつもは口うるさい周防課長も、落ち着かない様子で電話をかけたり、休憩室のテレビのニュースを見に行ったりして、仕事が手につかないようだった。 「課長の実家は福井の敦賀らしいっすよ。」 と、隣の席で太く短い指で器用にキーボードを叩きながら、後輩の小津が小声で俺に話しかけてきた。 そういえば、周防課長は単身赴任中で、福井に奥さんと二人の子供がいると聞いた事があった。 俺は小津に適当に相槌を打ちながら、少し気の毒には思ったが、顧客への契約書持参のアポが、今日の午前中だった事を思い出して、頭を仕事に切り替えた。 そして、書類を準備すると、壁にかかっているホワイトボードの行動予定表に行き先を書き込んで、鞄を抱え、会社を出て駅に向かって歩き出した。
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