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「やー、マジ完璧でした! ありがとうございます!」
「いやいや、いいってことよ」
協力してくれた顔のこえーオッサンに礼を言って頭を下げたら、ハハハ!と爽やかに笑って帰って行った。
ありがとう!オッサン!
あんたすげえよ!顔こえーけど!
立ち去るオッサンの背中を見送った後、まだ転んだまま呆然としてる女の子に声をかけた。
長めのふわふわしたくせっ毛。なんかあれだなー、全体的に色が薄い!
「なあ、大丈夫? 立てる?」
「…………」
「わ、ちょ、そんな乱暴にとんなよー」
声をかけて、右手に持ってた棒を手渡す。女の子は一瞬顔を強ばらせた後、すぐに手を伸ばして俺の手から勢いよく棒をとった。
女の子は棒を支えによろよろと立ち上がると、俺がいる方向に顔を向けて、口を開いた。
「勝手なことしないで!」
「へ?」
「誰だか知らないけど、あんたに助けられなくったって自分でなんとかできた」
「いや、どうみてもできて……」
「ほっといてよ!」
「…………」
女の子は威勢よく俺にそう言うと、さっさと背を向けて、右手に持った棒で地面を叩いて確認しながら歩いて行った。
ポツンと残されたみじめな俺。
ちょ、なんだよソレ!
そこは、ありがとう、にこってとこじゃねえの!?
なんか損した気分!
せっかく正義のヒーロー気取ってみたのに、逆に怒られた俺ってなに?すんげえみじめじゃん!
よろよろと歩いて去っていく女の子の後ろ姿を見て、右手でぐしゃぐしゃと髪をかき混ぜる。
んだよ、かわいくねーの!
気がつえー。
んでもって、かわいげがねえ。
それが盲目の女の子、倉田千秋に対する俺の第一印象だった。
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