押したスイッチ切らないで!

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「……ねえ、岡本」 「んー? なに?」 「今日もずっと元気なかったじゃん。森女の子と……まだ連絡とれてないの?」  そう聞いてきた片岡チャンは少し屈んで靴を履いて、前に垂れてる髪で隠れてどんな顔してるかはわかんねえ。下駄箱からちょっとボロボロなスニーカーを取り出して、ポイっと地面に落として、足を通しながら返事を返す。 「とれてねえよー。もう、全然ダメ……俺、嫌われちゃったのかも」  ハハハと乾いた笑いをこぼしながら言う。嫌われ、たのかねえ……もしそうだとしても原因がわかんねえんだけど。その原因を知りたいんだけども、電話とってくんねえし。 「電話だけが唯一の連絡手段って厄介だよなー。せめて学校が一緒だったら、無理やりでも会って話すのに」  電話だと無理やりも何もとるのは相手次第だしさ。結構不便。なーんてウダウダ考えてると、先に靴を履き替えた片岡チャンがいつの間にか隣に立ってた。おおう、気配を感じませんでしたよ。先祖忍? 「岡本はさ、なんでそこまでして、その子と話したがるの?」 「へ?」 「電話拒否られてんでしょ? それって話したくない、嫌だって言ってるよーなもんじゃない。相手があんたに気がないなら、さっさと諦めたら? 無駄だし」  片岡チャンの言葉がグサッグサッグサッと刺さる。て、的確な意見をありがとう。まさに片岡チャンの言う通りで、ちょっと動揺。真っ直ぐ見上げてくる片岡チャンの目にさらに動揺。諦める、ねえ……。 「…………」 「…………」  なんでか気まずい雰囲気に包まれる現場。なんだこれ。  俺を真っ直ぐ見上げてくる片岡チャンを見た後、右手で髪をかき混ぜて、溜息をついた。
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