押したスイッチ切らないで!

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「や、まあ、そうなんだけどさ。だからって、ハイ、諦めましょって簡単に諦められるもんじゃなくねえ? こういうのってさ」 「…………」 「自分でコントロールできねえじゃん。気持ちなんてさ」 「…………」  じっと見上げてくる片岡チャンに苦笑い。いや、そんなに見つめられるとちょっと困るというか照れるんですけど。襟足を右手でかきながら、話を続けた。 「なんかさ、どこで聞いたか忘れたけど、誰かを好きになるって、スイッチと同じだなんだって」 「……スイッチ?」 「そう。スイッチ。誰かが勝手に知らねえうちに、好きだーって気持ちのスイッチを押してて、その押したヤツのことを好きになんの。どんなに辛くたってさ、諦めたくっても、スイッチを押したヤツじゃねえとそのスイッチは切ることができねえんだって」 「…………」 「俺、その話聞いたときはあんま意味わかんなかったんだけどさ。今なら、なるほどなーってわかる気がする」 「…………」 「だからさ、やっぱ諦められねえの」 「……あっそ」  言い終わった後、にっと片岡チャンに笑いかけると、片岡チャンは視線を逸らして、俺の横をスタスタと通り過ぎて行った。その後ろ姿を横目で見て、溜息をついた後、スニーカーの左足の踵を踏んだまま、片岡チャンを追いかけた。 「ちょ、待ってよー。正門まで一緒に帰ろーねっつって約束したじゃん!」 「してない。あんたが勝手に言ってただけでしょ」 「無言は肯定の返事なのですよー。知らなかった?」 「なにそれ? 知らないし」 「じゃあ、覚えといて」 「イヤ」 「んだよー、片岡チャンのケチ!」
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