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「千秋」
「…………」
「……返事くらいしてくれてもいいじゃん」
誰もいない夕方の歩道で立ち止まる高校生2人。なんか、これ端から見たらすげえ修羅場みたいに見えんのかな。実際は修羅場になるよーな関係にまでいってねえ2人なのに。
ちいせえ頭を後ろから見下ろして、溜息をついた後、口を開いた。
「なんで、電話、とってくんねえの?」
「…………」
「急に連絡取れなくなったから、すげえ心配したし」
「…………」
「なあ、千秋、答えてよ」
「…………」
全然会話する気がねえ千秋。なんなんだよ、マジで。俺なんかした?なんでシカトすんの。わかんねえよ。理由言ってくれねえと俺、超能力者でもねえからわかんねえし。
どうしたらいいかわかんねえまま、右手で髪をグシャグシャとかき混ぜる。それから、とりあえず顔が見たいと思って、ブレザーの腕辺りを握っていた手を離して、前に移動した。俯いていて顔が見えねえから、少しかがんで顔を覗き込む。
その瞬間、俺は目を見開いた。
千秋が泣いてる。
瞑った目から涙が零れて、眉間に皺が寄って、まるで見てるこっちが辛くなるような泣き顔。え、ちょ、待って、なんで?
あまりの突然のことに動揺する。だって、まさか泣いてるとか思わねえし。
「え、千秋、ちょ、なんで泣いてんの……」
「…………」
「えっと……腕、掴んだの、痛かった?」
つうか、泣くほどイヤだった?
どんなに話しかけても全然返事をしてくれない千秋にこっちが泣きたい気分になる。もうマジでなんなんだよ。なんで泣いてんの?急に連絡取れなくなって、やっと会えたと思ったら、シカトの上に号泣。
どうなってんだよ。わけわかんねえ。
「…………」
「…………」
千秋は涙を拭うこともせずに、ぐすぐすと泣いて、それを見てる俺もどうしたらいいのかわかんなくて、黙ったまま。
しばらくそうしてると、千秋はゆっくり口を開いて、声を出した。
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