トモダチに許されないこと

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 どうでもよさそうな片岡チャンを見た後、体を前に戻して椅子の背もたれにもたれながら、ウーっと両手を伸ばして背伸びをした。1時間目なんだったけなー。英語?やだなー。つーか、俺、日本出る気ねえし。習う必要なくね?なーんて、バカ丸出しの考えをして、体を少し前に倒して頬杖をつきながら、窓の外に視線を向けた。  今日は所々に雲が浮かんでるけど、まあ、大体晴れ。千秋と会う時間にはきっとオレンジになって、キレイに夕日が見える気がする。今日はちょっと長めに解説しよう。そんで、久しぶりに楽しそうな千秋を少し振り返って見んの。最高じゃね?  まだ学校は始まったばっかなのに、あーあ、早く放課後になんねえかなーって思いながら、絵の具でガーッて塗りつくしたみてえな青い青い空を見上げた。ぼんやり空を見ながら、なんとなく昨日のことを思い出す。  俺が千秋と一緒にいてホントに楽しいって思ってんのか不安になって泣いた千秋。初めて見た泣き顔にどうしたらいいのかすげえテンパったけど。それ以上にビビったのは、あやうく抱き締めそうになったこと。  そんな風に思うのも初めてで、衝動っつーの?そんなもんが自分の中にあるのにもビビった。このケダモノ!わかってるさ。でも仕方ねえじゃん。不謹慎ながら「やべ、かわいい」って思っちゃったんだもの。このケダモノ!  まあ、いくらそんなケダモノみてえなことを思っても「ただのトモダチ」には許されることじゃねえんだけど。「千秋!俺だって楽しいに決まってんじゃん!」なんつってガバアッ!!って抱きついてみ?張り手くらった後、即刻逮捕だよね。事案だよね。  なーんてしょーもないことを考えてから、溜息をついた。
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