片岡紗英の迷走

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 ひどいことを言った自覚はある。  でも、結局意味は無かった。  土曜日。『千秋』って子が岡本から離れるように、岡本を嫌いになるようにウソをついた。まだ2人はトモダチだったから、くっつく前に邪魔したかった。  あたしはあの子にジャマだって言ったけど、きっと端から見たらあたしがあの2人にとって邪魔な存在。あたしだって、ちゃんと岡本が好きなのに。  好きな人に好きな人がいて。お互い好き合ってて。でも、それがわかっても、諦められるはずなんかないじゃない。ただ見てるだけなんて、出来るわけないじゃない。  月曜日に、岡本はすごく落ち込んだ様子で教室に入ってきた。その様子を見て、うまくいったんだって思った。あたしが言ったせいだなんてバレるはずもないのに、すぐにどうしたのかって聞けなくて、5時間目と6時間目の間の休み時間に尋ねた。『千秋』と連絡が取れなくて落ち込んでる岡本。それを見て、もう二度と連絡とらなければいいのにって思う気持ちと落ち込んでる姿に対する罪悪感とそんなにショックなの?っていう苦しさが混ざった。  半分ふざけて、半分本気で。あたしが『千秋』の代わりになろうかって、慰めてあげようかって言った。 『片岡チャンじゃ、ダメなの』  あっさり答えたその言葉にあたしがどれだけ傷ついたか、辛かったか、あんたにはわかんないんだろうね。あたしはあんたじゃないとダメなのに。  ああ、ムカつく。女々しい自分と気付かない岡本と想われてる『千秋』がムカつく。  放課後に麻美と梨佳と土曜のことを話していたのを藤嶋に聞かれた。  藤嶋は岡本と仲がいいから、きっと『千秋』のことも知ってるだろうし、岡本が『千秋』と連絡を取れなくて落ち込んでるのも知ってる。それがあたしのせいだって、岡本に言う気はないと言ってたけど、言うんじゃないかって本当は怖かった。だって、バレたら、トモダチでさえもいられなくなる。岡本は真っ直ぐだから、そういうこと許しそうにないから。
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