倉田千秋の我が儘

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 あたしの答えを待ってるらしい岡本に、少し困る。どうしよう。少し考えてから、前にクラスの子達が言っていた場所を思い出した。かわいくて、美味しいケーキ屋さん。本当はずっとずっと行ってみたかった。ケーキ屋さんとか、嫌がるかな。でも、行ってみたいな。意を決して、口を開いた。 「あのね、」 「なんだい、チイちゃん。言ってみなさい」 「……その呼び方やめて」 「ごめんごめん! で、なに? どっか行きたいとこ決まった?」  『チイちゃん』って呼ばれるのは小さな子どもみたいで嫌だから、思いっきり顔をしかめて言ったのに、岡本はおかしそうに笑って謝った。全然悪いって思ってない。 「ケーキ、食べたい」 「ケーキ? 別にいいけど。どっか行きたい店とかあんの? 自慢じゃねえけど、俺、ケーキ屋とか商店街の魔女みたいなババアが作ってるとこしか知らねえよ?」  魔女みたいなババア?なにそれ?ちょっと行ってみたい気もするけど、その魔女な感じは見えないからまた今度にしよう。 「うん、gattinoって言うお店で、学校の近くにあるとこなんだけど」 「学校って、森女の?(ガッテ……うん、発音できねえ)」 「そう。学校から家の帰り道にあるらしいから、近くまでならあたし道わかるよ」 「そっかー。よし、じゃあ、そこ行こ!」  ケーキとか久しぶり!とやけにはしゃいでる岡本になんだか嬉しくなる。よかった、やだって言われなくて。さっそく行こうってことになったけど、そこで問題発生。いつもは道がわからないあたしが岡本の後ろを着いて歩いてたけど、今日、道が分からないのは岡本の方。口で説明するのも難しいし、どうしようって考えてたら、それに気付いた岡本が話しかけてきた。
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