さみしくなんかないやい

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 ピーエム8時。  お袋のなんかビミョーな品が並んだおせちを囲んで今年最後の晩餐。何だコレ?昆布?いや、なんかちげえ。こんなヤツ学校近くの池で見たことある。  年越しそばって年越す時に食べるらしーけど、岡本家は代々おせちと一緒に食う。  理由は簡単。めんどくさいから。つか、寝る前にそばってどうよ?俺、どっちかつーと、うどん派だし。  コタツを俺、お袋、姉ちゃんで囲む。ビバ!家族ダンラン!天国の親父に手を合わせていただきます!  受験生な姉ちゃんは、上下ジャージに眼鏡。髪はもっさり。女捨ててるよ、この人。 「由貴、竜君なんで呼んでないのよ」 「呼んだって。でも、断られたの!」  我が家のアイドル竜ちんが今年家に来てないことが不満なお姉さま。多分お袋もおんなじよーなこと思ってんだろうな。事実を伝えたら、すんげえ顔で舌打ちされた。 「ったく、今年最後と新年一発目の目の保養だったのに」 「竜は姉ちゃんの格好を今年最後と新年一発目に見たくねえと思うけど」 「どういう意味よ」 「いってええ!! ちょ、コタツん中で足つねるとかマジ反則だし!!」  本当のこと言ったらコタツの中で伸ばしてた足を思いっきりつねられた。ちょういてえ!!  お袋はそんな長女と長男の小競り合いなんて、そっちのけで紅白に夢中。ガン見してる。誰出てんの? 「やっぱりいいわあー」  お袋がうっとり聞きほれてんのは、特別ゲストかなんかしらねえけど韓国からやって来たメンズシンガー。名前は……ウォビ……うん、ややこしいからウォン君とする。  お袋は第二次韓流ブームらしくって、よく代わりにTETSUYAにディブィディーを借りに行かされんだ。いわゆるパシリ。今は「真冬のアナタ」がアツイ。らしい。  そんな家族に囲まれての今年最後の晩餐。まあ、案外悪くない。 「あ! ちょ、それ俺が狙ってたヤツなのに!」 「知らないわよ。だったら名前書いときな、バカ由貴!」 「栗きんとんに名前なんてかけねえし!!」 「ちょっと、アンタ達静かにしなさいよ。今ウォン君が歌ってるのに」
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