さみしくなんかないやい

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「お前が言い出したんだから、時間くらい守れよ!」  待ち合わせ場所から初日の出スポットにゾロゾロ向かう途中、まだ怒ってるケンケンにややうんざり。器のちっちえ男だねえ。  今回の新年初日の出ツアーに参加してんのは、俺とケンケンと、同じ2-Aの本田厚(ほんだあつし)クンと武内陽介(たけうちようすけ)クンの4人であります。  ケンケンは竜と同じ2-Bなんだけど、本田厚、通称アッチャンとおんなじバスケ部で……まあ、とにかく仲良しなんですボクラ。  初日の出を見れたらどこでもいいってことで、向かう場所は、町のちょっとしたデートスポット展望台。  駅前の道をまーーっすぐ行って、はげちらかったオッサンがいる煙草屋を右に曲がって、すんげえ吠えるバカ犬シルビアがいる豪邸を左に曲がって、そっから後は山道ゴーゴー!  まだ薄暗い道を、4人並んで歩く。さみしー!駅前の店は全部シャッターが閉まってて何コレ?オイルショック?的な感じをかもしだしてる。オイルショックが何かわかんねえけど。開いてんのはコンビニかモックくらいで、24時間開いてる店の独壇場さ!電柱についてる街灯がチカチカ光って、今にも切れそうになってる。誰か換えよーよ!蛍光灯持ってきて!  ってな感じで、プラプラ辺りを見渡しながら歩いてると、隣にいた武内陽介クンこと、タケが話しかけてきた。 「なあ、由貴」 「なーにー? あ、言うの忘れてた。あけおめ!」  忘れそうになった新年の挨拶もそこそこにタケに返事を返す。つか、タケ、髪切った?なんかアレだ、文明開化みてえ。ざんぎり頭。たたいたら音すんのかな。
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