晩秋浮島堤(バンシュウ ウキシマ ヅツミ)

3/6
前へ
/138ページ
次へ
男には犬が引っ張るその先に 白く横たわっている物が ぼんやりと見えてきた。 ますます、犬はぐいぐいと飼い主を引っ張る。 『う、うわーっ…』 男が近付いて良く見ると… 横たわっていたのは真っ白い顔をした若い女性だった。 男は女の手を握ってみたが、氷の様に冷たかった。 脈は既に無かった。 犬はまた、けたたましい鳴き声をあげて飼い主を引っ張る。 動揺しながら男は後を追うようについて行く。 『うわあっ…』 こちらでは、桜の枝にヒモを垂らして 若い坊主頭の男性が首を吊っている。
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!

164人が本棚に入れています
本棚に追加