嗜好・思考・至高

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    「それにしても」珈琲をカップに注ぎながら、香坂楓が言った。「何だか“意味深な事故”ですよね」    香坂の言葉に、柊は内心で、確かに。と頷いたが、表情には出さなかった。     「“意味深”?何処が?」明日香が香坂に言った。   「“事故の内容”よ」香坂が続ける。「“椚カルラ”が“焼け死ぬ”なんて」    香坂の勿体振った言い方に、明日香は少しだけイラつきを覚えた。仕方なく香坂に向けていた視線を國枝に向ける。  香坂が知ることは大体が國枝の知ることだからだ。    明日香の視線を受けて國枝知草は一つ咳ばらいをしてから切り出した。     「つまりね、“椚カルラ”の名前に由来するってことさ」國枝知草は珈琲に沢山の砂糖を入れながら言った。明日香が知る限り、角砂糖を6つもだ。「椚は別として、“カルラ”の方。これはインド神話に出て来る神鳥“ガルーダ”に当たると見たね」    國枝がもう一つ角砂糖を足す。明日香はうげっ、と舌を出す。     「今の桔梗さんの顔」香坂が唐突に言った。   「なに?」と短く明日香。   「蛙に似てたわ」    香坂がクスリと笑う。 明日香は少しだけ不機嫌になりながら、國枝に先を促す。    國枝知草は一つ頷いて先を続けることにした。
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