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(2)
柊小次郎は一人、研究室に佇んでいた。
ほんの三十分くらい前にいつもの三人が解散したのを見送ってから、彼の思考を支配したのは、やはり“あの夜”の事だった。
腕時計に眼をやる。
柊の時計には時間以外にも、曜日と月がそれぞれ円形にくり抜かれた型の中で指し示されている。
更に、1番外側にある日時は、“あの夜”からちょうど五日過ぎたことを知らせていた。
柊にとってこの五日間は“あの夜”を忘れさせるには短すぎた。
故に柊は何かにつけては“あの夜”を頭の中でフラッシュバックさせている。気にするな、とは言ったものの1番気にしているのは、自分である。と、柊は分析していた。
「僕は何を考えている?」
柊は自分の考えを否定する様に呟いた。
(あれは事故だ)
今度は内心で自分に言い聞かせる。
思考を切り替えることさえ出来たなら、自分を制したことになる。と柊は判断した。
煙草に火をつける。
深いところで煙を楽しむ。
(これを吸い終えたら、全部忘れよう)
RURURU、、、
そう考えた矢先、携帯が鳴る。柊は静かにそれを取った。
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