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「柊教授の携帯ですか?」
妙に歯切れのいい男の声だ。
柊の頭の中には、この声の記録はなかった。
「はい」柊が短い返事をする。「どちら様でしょう?」
「失礼」男が言った。何が失礼なのか柊には解らなかった。「箕堂島の件で一度お伺いした、長岡(ながおか)です」
長岡と名前を聞いて柊はようやくそれが誰なのか思い出した。
あの事故の後、嵐がやんでから現れた刑事の一人だ。
「その節はどうも」言ってから妙な言い回しだな。と柊は気付く。
「実は、教授にお話したいことがありまして」長岡刑事が言った。「今、お時間よろしいですか?」
柊はなんて狡い男だ、と長岡を評した。それとも刑事というのは皆、こうなのだろうか?
「今は、、、」時計を見た。まだ時間は八時前だった。「どうやら、空いている様です」
「それは良かった。実は、大学の駐車場まで来てるのです」
長岡の言葉を聞いて柊は携帯を耳から離して睨みつけた。
「教授?」受話位置から長岡の声。
「15分で行きます」
それだけ言って柊は電話を切った。
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