嗜好・思考・至高

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     (3)     「そろそろ、本題、、、よろしいですか?」    紅茶を一口含んでから長岡刑事が言った。    三人は長岡のパトカーで移動し、大学近くのレストランで夕食を済ませたところだった。    店の周りには街灯以上に明るい建物もない。すっかり遅くなってしまった、と柊は思った。     「本題とは?」柊は煙草に火をつける。   「はい」長岡刑事は畏まった様に姿勢を正した。「実は、、、専門家のお二人の意見が聞きたいのです」   「専門家?」柊は長岡に聞き返す。   「そうです」長岡が頷く。    柊は背もたれに身を預けた。研究室の古い椅子とは違い音が鳴ることはない。     「僕は論外だ」柊が言った。「蓮實なら犯罪心理だとかで参考になる話しも出来るでしょうが、僕は生憎と“民俗学者”です」    柊の言葉に蓮實は、もっともだ、というジェスチャをした。     「承知しております。が、柊教授にはどうしてもお話をお伺いしておきたい」長岡が食い下がる。   「なぜ?」柊が抑揚なく言った。      長岡はしばらく言い出し辛そうにう~ん、と唸ると決心したように二回頷いてから切り出した。     「実は、、、亡くなった“椚カルラ”は、貴方の恩師である、“久家数馬”だと解ったんです」
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