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柊は何も言わない。否、言えない。
くわえていた煙草を思わず落としそうになる。
普段ならこんな失態は見せない。そんな柊が明らかに動揺した。
(久家先生が、、、死んだ)
あの夜、、、目の前で焼け死んだ“椚カルラ”が脳裏を過ぎる。
、、、あの表情は、、、
「お上手ですな」
不意に長岡が言った。
動揺する柊には一瞬その意味が解らなかった。
「どう言う意味だ?」柊の代わりに蓮實が言った。
「そんなに恐い顔をしないで下さい。我々は人を疑うのが商売ですから」長岡が笑顔で言う。
「僕が、、、久家先生を殺したと?」柊がたどたどしい言葉を吐き出した。
「可能性の一つです」
長岡は相変わらずの笑顔で否定の言葉も出さない。
「俺たちに何をさせる気だ?」蓮實が苛々した口調で言った。
「“捜査協力”していただきたいだけです」長岡は紅茶を一口飲んで続ける。「調べた結果、あれは事故ではありません」
長岡の言葉に、柊は鳥肌が立つ思いがした。
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