嗜好・思考・至高

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    「ご注文は?」    少し間をおいてから、エプロンをした初老の女性がメモ紙片手にやってきた。    國枝と法村は珈琲を、明日香と香坂は烏龍茶をそれぞれ注文する。     「で、柊教授に話とは?」國枝が聞いた。   「はい。実は柊教授には面識がありまして、、、」法村が言う。   「“箕堂島”ですね」法村の言葉を國枝が奪う。   「そうです」法村は頷いた。「その時に少しだけ気になる事が」   「気になること?」今度は香坂が割って入る。    明日香は内心で、二人とも聞き下手だな。と思った。     (私なら全部消化してから一気に聞くのに)     「お待たせしました」エプロンの女性がトレンチを持って現れた。「國枝くん、今日のは特別美味しいハズよ」   「それは楽しみです」國枝が笑顔を返す。      全員が飲み物を前にしても口をつけようとはしなかった。何故かそういう空気じゃない気がしたのだ。     「で、気になることって?」國枝が再度先を促す。   「はい」法村が頷く。「実は“僕の師”と話をしていたんです」   「師?師匠って意味の師?」明日香が意味のない質問をする。   「そうです。“師匠”です」法村が頷く。      國枝は法村の意図が掴めない。一体何が気になるのか。  國枝が顎に手をやる仕草をする。考える時はいつもこうだ。    しかし、國枝の思考を遮る様に法村が言葉を発する。   「その晩、、、」法村が視線を落とす。「僕の師匠は死にました」      その言葉に國枝は頭の中で何かが弾ける感覚に襲われた。
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