嗜好・思考・至高

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     蓮實のツーシータのスポーツカーは張り替えてあるせいか、フカフカの座り心地で煙草を吸って安心した柊には眠気を誘う要因だった。    こんなシートに座っていたら、事故に遭うだろう、と柊は思った。     「例の件」蓮實が言う。「受けるのか?」    柊は蓮實の“例の件”と言う言葉が一瞬理解出来なかった。     「例の件?」   「馬鹿野郎」聞き返した柊に蓮實が言った。「久家先生のお嬢さんに会うって話だ」   「あぁ、、、」柊は思い出す様に言う。      蓮實の言う“例の件”とは長岡刑事がもたらした“久家灯馬”との面会のことである。  柊は迷っていた。     「会って、何を言えばいい?」柊がシートにもたれ掛かる様に沈み込む。   「何を、とは?」   「ご愁傷様です。とか、残念です。とか」柊の表情は真剣だ。   「そんなことはいい」蓮實が言う。「他に聞き出すべき事があるだろう?」
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