嗜好・思考・至高

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    「國枝くん」柊がカップを置いて、吸いかけの煙草を灰皿から取って、くわえる。「君の旺盛な好奇心はある種の武器だ。これから、社会生活でも大いに役立つだろう、、、けど」   「けど?」國枝が聞いた。   「考えがまだまだ“学生”だね。まるで君が飲む珈琲みたいだ」柊がニヒルに笑う。   「“甘い”って言いたいんですね」國枝がカップを置く。「確かに軽率ではありました。けど、考えが甘いって言われるのは腹が立ちます」    國枝が柊を見据える。柊は真っ直ぐにその視線を受け止めた。     「君が怒る理由は一見あるようで、その実ない」柊は煙草を消して続ける。「世間では“逆ギレ”って呼ぶみたいだ」    柊の言葉に國枝は、口喧嘩じゃまだ敵わない、と観念した。どう考えても柊のが正しいことは國枝にも解っている。     「解りました。僕の負けです。すみませんでした」國枝が投げやりに頭を下げた。    その様子に柊はスッと眉をあげると言う。   「勝ち負けの話をしてる訳じゃないよ。最初に言ったけれど、君の好奇心は武器だ」      言われた國枝は眉を寄せる。     「センセは怒ってるんですよね?」   「何故?」柊は本当に不思議そうに聞いた。      國枝は心底柊小次郎には敵わないと核心する。
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