曖昧なショーで逢いましょう

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    「、、、お願いね」    長岡に聞こえない様に柊がひとりごちる。    法の番人とも言われる警察からの“お願い”にどれだけの強制力と拘束力があるのか思案に耽る。  やがて比較の対象が尽きると柊は一つ結論を出すことにした。     (少なくとも、僕の講義よりは上だ)    結論に一応の満足をしてから、ジーンズのポケットに押し込められた煙草を取り出す。ボックスが折れ曲がっていびつな四角形をしていた。     「Piece(ピース)ですか」長岡刑事が横目で言った。   「“平和主義”ですからね」柊が直ぐに言う。   「ご存知ですか?ピース缶爆弾事件」長岡がニヤリッと笑う。「“平和缶爆弾事件”ですよ」   「確か、18人が誤認逮捕されて、全員が無罪になりましたね」柊が言った。    長岡は肩を上げると、「禁煙です」と不機嫌そうに言う。  きっと警察関連で皮肉を言ったからだ、と柊は反省した。
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