曖昧なショーで逢いましょう

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     (2)      大学から1時間近く走り続けてようやくパトカーは病院の敷地内に入った。  その間、何となく煙草を吸わずにいた柊は頭に浮かんだ様々な疑問を解決出来ないまま外の景色を眺めていた。     「おっきな病院!」    桔梗明日香が身体を乗り出して言った。     「ノリムラ記念病院です」運転席にいる長岡が言った。    柊は長岡の言葉に病院を見上げる。確かに大きな敷地に素晴らしい建物だ。  真っ白な煉瓦作りのベンチから広い中庭の芝生までしっかりと手入れが行き届いている。    しかし、柊はそれ以上は何も感じない。  煙草を吸わなければ考えられない。     「、、、つきました」長岡が言った。「公用とはいえ、パトカーでこんなに走ったのは久しぶりです」   「久しぶりって、、、前にもあったんですか?」明日香が聞く。   「ありますよ。内容は言えませんが」長岡が笑顔で返す。    その返答に明日香が唇を尖らせた時、運転席のウインドウのノックと共に蓮實水明が現れた。
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