曖昧なショーで逢いましょう

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     (3)     「失礼します」    そう言って長岡が病室に入る。    病室は久家灯馬だけの為に用意された個室のようだ。    柊と蓮實が長岡に続き、明日香たち三人は入る事を許されなかった。    真っ白なベッドは、中央よりも少しだけ窓よりで、その窓から見える景色は病院の中よりも閑静に思えた。窓の前、つまりはベッドの脇に、あの日柊が出会った法村俊弥が腰掛けている。    稼動式のベッドが45°位の角度で固定されていて、そこに身を預ける少女がこちらを見た。     「ご機嫌よう。刑事さん」少女が言った。透き通る様な声だ。   「気分は如何ですかな?」長岡刑事が顎を撫でながら返す。   「えぇ、今日はすごくいいみたい」久家灯馬が両の指を合わせて言う。その仕草は誰が見てもほほえましいものだ。     「こちらは、K大学の--」   「あなたが、、、柊小次郎」      灯馬が柊を指差す。    柊は何も言わずに頷いた。
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