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「やっぱり」灯馬が笑顔になる。「父が言ってた通りの人だわ」
「久家先生が僕を?」柊が首を傾げる。
「えぇ、よく話してくれました。“変わっているけど、キレ者”だって」
灯馬の言葉に柊は「そう」と抑揚なく返事をすると、考える様に顎に手をやる。
久家灯馬はそれを不思議そうに眺めた。
「似てるわ」不意に灯馬が言った。
「何に?」顎から手を離して柊が聞いた。
「父よ」灯馬の語調が少しだけ暗くなる。「久家数馬に雰囲気が似てる」
俯く灯馬に、柊は「そう」と、もう一度抑揚なく言って続ける。
「僕としては似てるとは思わないな。でも-」柊が言う。「悪い気はしない」
柊にとって久家数馬は恩師であり、目標だった。
その娘から似ている、と言われて嫌な気はしない。
「刑事さん。私、柊さんと二人で話したいわ」
久家灯馬が言うと、長岡は少しだけ意外そうな顔をしてから頷いた。
病室から出る時、1番後ろに着いていた法村と柊は目が合った。
お互いに何も言わなかった。
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