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「、、、解りません」
久家灯馬は柊から視線を逸らして言った。
「そう」柊は灯馬から目を離すと抑揚なく呟いた。「よく解ったよ」
「解った?今、解ったとおっしゃいました?」久家灯馬は直ぐに柊の言葉を拾いあげた。「何が解ったんですか?」
柊は灯馬に視線を返すと、小さく首を振る。
「すまない。語弊があるみたいだから、訂正するよ。“解ったけれど、解らない”が正しい」
「理解出来ません。柊さん、私は父と違ってそういう問答に弱いんです。解る様に話して頂けませんか?」
柊は眉をあげると、灯馬に語りかけるように口を開いた。
「僕はね、期待をしてたんだ。君の口から“あれは事故です”と否定されるのを」柊は一度言葉を切ってから先を続けた。「しかし、君自身も、久家先生が殺された。と、認識している。つまり、先生は殺されたんだろう。“それ”が解った」
「じゃあ、解らないのは?」灯馬が聞いた。
「殺した犯人。それと-」柊は遠くを見た。「動機。何故、久家先生が死ぬ必要があったのか」
柊小次郎は、自分自身のらしくない思考に少しだけ驚いた。
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