曖昧なショーで逢いましょう

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    「それは違うね」    柊小次郎が言った。     「何が違うんですか?」明日香ではなく香坂楓が言う。隣で明日香も相槌を打った。     「“意識”が違う」柊は誰も見ないで答えた。「少なくても、僕は。ね」   「確かにな」蓮實水明が柊に同調して言う。「久家灯馬との会合でリアリティが増した」   「“リアリティ”だなんて!私たち、あの場にいたじゃないですか」桔梗明日香が反論する。   「明日香くん。蓮實が言いたいのは“主観”に変わったという意味だよ。確かにあの場に僕らはいたけれど、“客観”でしかなかった。でも、久家灯馬さんに会って被害者の主観を味わうことが出来たんだ」    柊の言葉に明日香は怖ず怖ずと顔を伏せる。  向いに座る國枝は“味わった”ではニュアンスが違う気がするな、と考えたが口にはしなかった。     「リアリティついでに」國枝が言う。「ちょっぴり耳寄りな情報を仕入れました」   「“情報”だと?」蓮實が返した。    國枝はコクリと頷くと、「とりあえず、料理頼みませんか?」と皆に促した。
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