曖昧なショーで逢いましょう

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      (6)     「僕は珈琲をブラックで」   柊小次郎は食後に珈琲を注文すると、煙草を手にとり口にくわえる。しかし、ライターから伸びた炎が煙草の先端を捉える寸でのところで、彼はライターから親指を離した。  同時に火が消える。   「そんなに睨むことないだろう」柊が視線の先の人物に言った。    視線の先の人物。蓮實水明は小さく息をついてから言う。     「おい、喫煙者(おまえ)にはマナーがないのか?お前以外はみんな吸わないのにバカバカ吸いやがって」    言われた柊はスッと眉を上げてから、テーブルの端に置いてある紙を取り上げて蓮實の前に差し出した。     「僕の眼鏡の度がまだ合ってるなら“喫煙席”って書いてあるけど」   「ははっ流石コジローセンセ。確かにその通り」蓮實の横で嬉々とした國枝が言った。   「ただの屁理屈だ」と、蓮實。    香坂楓は、それでも理屈です。と発言しようかと考えたがやめた。 この無駄な論議が終わらなくなるからだ。
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