曖昧なショーで逢いましょう

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     やがて諦めた様に蓮實水明が黙ると、代わりに國枝知草が身を乗り出すようにテーブルの上で、両の指を重ねる形で腕を組んだ。  國枝は笑顔を浮かべて言う。     「蓮實先生や、コジローセンセには悪いですけど、、、」勿体振る様に一度切ってから國枝は続ける。「俺の見聞きしたモノを推理した結果をお話します。恐らくこれは“真実”であり、僕の推理で“解決”する筈です」    蓮實は隣の國枝の発言に一瞬驚いた様に眼を見開いたが、直ぐにいつもの表情になる。  柊は変わらず無表情だった。     「まずは、“椚カルラ”の始まりに遡ります。最初は漢字で“迦楼羅”という“軽業師”の集団だったそうです。今でいうサーカスみたいなもんですね」    國枝が饒舌に語り続けて行く。  桔梗明日香は聞き漏らさないように注意しながら、それを想像した。     「その“迦楼羅”は時代の移り変わりとともに、次第に大道芸人やちんどん屋などに形を変えながら、人数を減らしていき、大正時代に西洋のマジックが入って、今の“奇術師椚カルラ”になったんだそうです」國枝が角砂糖を三つテーブルに置く。「しかし、初代椚カルラは三人いました」   「三人?」香坂が言った。   「そう。三人」國枝は三つの角砂糖を上から押す様に数える。「でも、今は一人。正確には“いません”」    そう言って、國枝は両端二つを押し潰す。  蓮實はその意味を察して眉を潜めた。
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