曖昧なショーで逢いましょう

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    「つまり、それって、、、」桔梗明日香が思い当たる恐ろしい予想に対して漏らす。    國枝は真剣な面持ちのまま静かに頷いて続けた。     「現実にあるなんて思いもしませんでしたけど、“椚カルラ”が“一子相伝”なら、どちらかが“前の椚カルラ”を殺して“新しい椚カルラ”になろうとしたんじゃないでしょうか?」國枝が残った角砂糖を持ち上げて、自分の珈琲に落とす。「そして、1番可能性として高いのが“久家灯馬”だと思います。父親と同じステージに立ち、“被害者のフリ”をして名を継ぐ。みんな彼女に同情して協力的になるんですから」    明日香は國枝の話しを聞きながら背中が総毛立つのを感じていた。自分の考えと全く一緒だったからだ。そして、同時に“椚カルラ”がどうしようもなく恐ろしくなった。  あのステージに立っていたのは、本物の“鬼”だったのだ、と思うと悪寒がした。     「どうですか?コジローセンセ」國枝が柊に問う。   「うん」柊は一度頷いてから先を続けた。「それが“小説”なら間違いなく久家灯馬が犯人だろうね」   「どういう意味ですか?」國枝が直ぐに言った。   「君の推論にはパンチが足りない。決定的な何かが」柊は言う。「父を殺し、名を継ぐのにワザワザ自分の顔を焼いたりするだろうか?年頃の女性がさ」    柊の言葉にみな聴き入る。柊は深く息を吸ってから続けた。
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