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“これより、嵐が去るまでの間、この椚カルラによるゲインタイムショーを御覧頂きたい”
あの夜を何度か瞼の裏に再生するうちに、桔梗明日香は“椚カルラ”の最初の口上まで遡っていた。
焼け落ちる人影の印象が強すぎてここまで戻るのに時間がかかったのだ。
(“ゲインタイムショー”)
瞳を開く。部屋の明かりがやけに眩しかった。
明日香はノート型パソコンに向かうと、すぐに“ゲインタイム”と片仮名のまま検索をかける。
表示されたのは“タイム”に該当するものばかりで、中々意味を見つけられない。
「こういう時は“地味子ちゃん”か」
直ぐに香坂楓に電話をしてみる。彼女は7コール目で漸く受話ボタンを押したようだ。
「こんな時間に何かしら?もう2時よ」
言われて初めて時計を見る。確かに時計は午前2時に迫る時間だった。つまり、何時間も考え事をしていたことになる。
「ごめんなさい」明日香が言った。「香坂さんに教えて欲しい事があるの」
「何かしら?」
「“ゲインタイム”ってどういう意味か知ってる?多分英語なんだろうけど、表記が解らなくて」
「“ゲインタイム”、、、」香坂が繰り返す。「多分、表記はG、A、I、N、T、I、M、E、だと思うわ」
「意味は?」
「調べなさいな」
香坂はそう言って電話を切った。明日香は仕方なくもう一度検索する。
「“gaintime”」
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