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ごそごそと音がして
「ただいまー」
と良太の声が廊下に響いた。孝史が入ってきたのかと多少身体を震わせていたけど、良太の優しい声を聞いて胸を撫で下ろす。
「小織ー? いないのかぁ?」
家中電気も点けていなかったために、良太は玄関から廊下、リビングに至るまで電気のスイッチを押しながら歩いているようだ。
私は急いで自室から出ると、階段の電気を点けて良太のいるリビングへと小走りに下りて行く。
「お帰りなさい良太っ。ごめんね、うたた寝しちゃってまだ何もやってないのよ」
スーツ姿の良太に焦ったようにそう言うと、良太は私が居たことに驚きつつも笑顔で振り返った。
「いいよ、僕は先に風呂入るから。お湯張ってないよね?」
「うん。ごめんね」
私が申し訳なさそうに謝ると良太の大きな手が優しく髪を撫でる。良太は小さく頷いて風呂場へ歩いて行った。
私は右手に握りしめたままの携帯を気にしながらキッチンへと向かい、急いで夕飯の支度に取り掛かった。
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