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これは何だろう――?
「だ、誰のいたずらだよっ」
良太が携帯を握りしめて何か操作をしている。メールを削除しているみたいだけどうまく消せないようだ。
「どうして消えないんだっ!」
「落ち着いて下さい、安藤さん」
畑野さんは苛立つ良太を制して携帯を受け取った。そして携帯を預からせて下さいと静かに私に語りかけてくる。私はこんな恐ろしい携帯は要らない、そう思った。
「そんなの要りません……。用が済んだら廃棄してください――――」
畑野さんは苦笑いを残して去って行った。良太は畑野さんをロビーまで送って行くと言って一緒に部屋を出て行く。扉が閉まる音が静かに室内に響いて、一人残された私はゆっくりとベッドに身体を沈めた。
「はぁ……」
自然とため息が漏れる。
携帯は警察が処分してくれるから問題ない、よね。
――――ブーブーッ
「なにっ!?」
どこからか携帯のバイブの音がする、怖い――。
どうしよう、どこから聞こえるのかしら。いつまでも消えないその音の主、携帯を探すためにベッドから下りて部屋中を見て回る。
――どこにもないのに鳴ってる。
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