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「やだっ……どこで鳴ってるの」
私はなぜか怖いはずなのに、どこかで鳴っている携帯を部屋中探し回った。消えないバイブの音に私は理性を保てず必死にあちこち掻き回す。
一向に見つからず泣きながらベッドに腰掛けた時、不意にすぐ近くから例の音がした。今までなかったはずなのに、携帯はさっき私が捲った掛け布団の中で怪しく光っている。
恐る恐るそれを手に取った私は愕然とした。それは畑野さんに渡したもの、私の携帯。
それはまだ鳴り続けていて、まるで私に早く確認しろと訴えているかのようにとまらない。
――パチンッ
と音をさせて私は震える指で携帯を開いた。
「ひっ……!?」
携帯は開いた途端に鳴り止み、私はそこに映ったものを見て思わず悲鳴をあげて床に落としてしまった。
床に落ちたにもかかわらず、携帯の画面にはさっき私が見たものが未だにはっきりと映っている。
それは孝史の不気味な笑み……。
孝史は俯いていて、顔全体は見えないけど口だけは嫌というほどくっきりと浮かび上がっている。その口許は三日月のように鋭く口の端を吊り上げて笑っていた。
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