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そこに立っている女性が和美であるはずがない。だって私の住所はおろか、顔も知らないはず…………あれ?
(そうよ……。住所を知らないのに何故孝史を殺せたの? おかしいじゃない……)
今まで気が動転していて気がつかなったけど、県は知っていても詳細は知らないはず。なのに和美からのメールには、殺害を仄めかす文章が綴られていたわ。ということは……、私を調べた?
「窓閉めるよ?」
「あ、うん……」
孝史からのメールに謎の女性、心地が悪くなかったのか良太は窓とカーテンを閉める。私は、孝史というこの世を去った者への恐怖と、和美という現実への恐怖を感じ、生きた心地がしなかった。
もしあの女性が和美であったなら、私に渉を殺害するよう催促しにきたか、それとも――。
――ブーッ、ブーッ
「……ひっ」
室内の静寂を破って、私や良太をびくつかせたのは他でもない、私がさっき投げ捨てた携帯。
「どうして……!? あんなに遠くに投げたのにっ」
私はここが病院だということも忘れて声を荒立てた。良太でさえその不可解な、不吉な現象に堪えられずガクガクと体を震わせている。
私の携帯はベッドの枕元にひっそりと置かれていた。マナー着信音は止まらない。
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