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石のように動かない良太を横目に、私は震える体をゆっくりとベッドに向けて歩き出した。近付きたくないと言わんばかりに私の体は、その意に反してどんどん震えていく。
やっとの思いでベッドまでたどり着き、一向に鳴り止まない携帯を手に取った。
再び携帯を開きその液晶画面を見れば、メールではなく電話だった。着信しているのに相手の番号通知が表示されていない……。
恐る恐る通話ボタンを押し、思い切って耳にあてる。
『…………小織、ズット一緒ニイヨウネ……。コノ携帯ハ、オレ達ノ愛ノ証ダヨ』
「孝史…………」
やっぱり孝史だった。
死んだはずの孝史からメールや電話がかかってくる。
私の体はさっき以上に震えていた。耳元から携帯を離し、孝史が未だに何か言っているらしい言葉も聞かないままベッド脇に落とした。良太は何を思ったのかそれを拾い、自分の耳元に携帯を押し当てて孝史の声を聞いている。
(もう――嫌)
良太が恐怖より怒りに身を震わせているのを、ただ私はぼーっと見つめていた。良太は二つ折りの携帯を持ち替えて、それをバキッと音をさせて真っ二つにする。
「…………」
さっき良太が踏んでも壊れなかった携帯が、今度は簡単に壊れてしまった。
「小織、これでもう大丈夫だぞ」
本当にそうなのかしら……?
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