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「安藤さーん、朝ですよ」
誰かに朝だと起こされまだ重い瞼を開けたら、そこには二十代後半くらいの看護婦さんが笑顔で私のベッド脇に立っていた。カーテンが開けられているらしく、室内は明るくて眩しい。
「…………三橋……さん?」
その名前を呼ぶと、彼女は可愛らしく微笑んで「はい、朝ですよ」と明るく話しかけてくる。
三橋さんは私の担当をしてくれている若い看護婦さん。いつもニコニコと笑顔で患者と接していると評判らしく、私も彼女の笑顔に癒される気持ちがよく分かる。
「旦那さんは朝ご飯取りに行かれましたから、もう少し待ってて下さいね」
三橋さんはそう言うと、可愛い笑顔をそのままに部屋を出ようとドアに近づいた。私は昨晩良太が言っていたことを思い出して、三橋さんに聞いてみようと口を開く。
「ね、ねえ三橋さん?」
「はい? どうかなさいました?」
三橋さんはキョトンとした表情で振り返って、ベッド脇に戻ってきた。
「実は昨日の夜ね、良太が看護婦さんの誰かに、外を見てきてほしいってお願いしたと思うんだけど」
私がそう語ると、三橋さんは思い当たることがあったのか少しだけ表情を曇らせて私を見つめる。
やっぱり何かあったのかもしれない、私がそう思ったのを察したのか、彼女は小さな声で語り始めた。
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