号砲

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「それでは6年生の部を始めます。位置について……」 学生時代、陸上部でその名を全国に轟かしたという青山先生がピストルを構えた。 「あっ!ちょっと待って青山先生!」 号砲を鳴らそうとする先生を制した。 「どうした?もうトイレには行けないぞ!」 「違うよ。ちょっと聞きたいことがあるっちゃん。今日はどんくらいのタイムで走ったら速い?」 「う~ん…そうだなぁ……1.5kmだから4分台で来れば結構速いぞ。」 「じゃあ先生はどのくらいで走っとったん?」 続いて稜が尋ねた。 「先生は速かったぞぉ~!自己記録は……大学のときのだから参考にならんだろうな。中学時代は1500mは4分13秒が自己最高記録だった。全国大会まであと一歩だったなぁ。」 「4分13秒かぁ……」 神妙な顔つきをすると青山先生は呆れるように言った。 「おいおい。いくらお前らが速くても4分13秒は無理だよ。その記録は体がほとんど出来つつあった俺が毎日努力して作った記録だからな。」 しかしそんな言葉は俺らの耳には入っていなかった。 『フッ……小生意気な糞ガキ共だ。確かに健太も稜もバカッ速い。だが“普通の小学生より速い”程度だ。4分13秒なんか出せるわけない。4分台が出りゃ大健闘だ。』 「よし!気を取り直して。位置について………」 「ヨーイ………」 その時青山には二人の周りの光景が歪んだように見えたという。 グニャリ……… 『こいつら…!?』 パン!!!
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