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「ちょっと!そこのオッサン!こんな真ん中で寝てないで!」
ゆっくりと起き上がって声の持ち主を見上げた。
ショートカットでジーンズ、Tシャツどこにでもいそうなガキンチョのはずなのに、異様な雰囲気をもっていた。
死んだ魚の様な目をしていたからだろう。
「…お堅いねお嬢さん。」
「…か…」
ガキンチョは俺を見て一瞬固まった。
正体がバレたか…?
「か、堅いとかそういう問題じゃなくて、寝るなら彼処にあるベンチで寝てよね!罰当たりだよ…」
彼女が指をさした方をみると初夏の陽射しでジリジリと照り付け熱されたベンチがあった。
「冗談だろオイ…(苦笑)あんなトコで寝たら日焼けどころじゃ済まないって。火傷するよ(苦笑)」
「……(苦笑)とりあえず本堂前で寝ないで…」
「ハイハイ。」
ガキンチョに怒られる大人。
情けねぇな俺…
そう思った反面その注意や突拍子ない態度が嬉しかった。
口元を綻ばせながら、持ってきたギターを担いで彼女に背を向けた。
「ギター…」
ふと後ろで彼女が呟いた。
振り向いた彼女の目は死んだ魚より少し輝いていた。
「ギター興味あんの?」
俺は彼女の方にギターを差し出した。
「あるけど…」
「じゃあこのギターやるよ。」
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