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朝一番、今日は始業20分前に珍しくついた私を囲み、会話が始まった。
(昨日はあんまり眠れなかった……)
あんな不愉快な眠りは久しぶりだ。朝五時頃に目が覚めてしまって、しばらくぼーっとしていたけれどあんまりにもそれが辛くなったので早めに着替えてみた。そしたら始業に間に合った。
「おはよ~有栖」
「おはよう苺ちゃん」
「ナチュラルにあたしの存在は無視ですか」
「うふふ。冗談よ、胡桃ちゃん」
「うわっ、なんか気持ち悪い! 有栖のキャラ崩壊!」
あはははは、と、教室に笑い声が響く。小市民はいつでも笑顔。笑顔は、嫌われないための秘訣でもあるから。
談笑をしていると、ふと胡桃が真顔になってこっちを向いた。
「良いなぁ、有栖」
「え?」
ポツリと呟いた一言に私は固まった。心の中でたらりと冷や汗が流れる。笑顔が凍りついてしまったかもしれない。
ピタッと“イイコの不思議野有栖”モードが一瞬停止する。
さらり、と隠すように結った髪が揺れる。身構える。
「こぉんな綺麗な金髪で。外人さんみたい。名前も有栖だし」
身構えていた身体から力が抜けた。なんだ、これは心配する事じゃなかった。
小首を傾げて誤魔化す。
「そ、そうかな……?」
「そうだよー。ねえ、苺ぉ?」
「うん。苺もそう思う」
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