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「……なんか、嬉しいな」
私は花が綻ぶように微笑(ワラ)ってみせた。
「……っ――!」
いつもの笑顔とは違うもの。やり過ごすものではなく、愛されるための笑顔。
自分を一番魅力的に魅せる。
「有栖可愛い───ッ!!」
胡桃が勢いよく飛び付いて来て私に頬擦りを始めた。その反応を見て私は安心した。まだ、大丈夫。私は独りじゃない。
「わわわっ!……恥ずかしいよ止めてよ胡桃っ」
「その声もまた可愛いぞぉ、有栖」
「やっ!……なんだか胡桃、変態みたいよ」
ほら、ね?
また騙された。なんて簡単なの。なんて単純なの。
「もぅ、有栖はアレだ!“不思議の国のアリス”のアリスを凌ぐ程の可愛さだ!!」
「そうですねぇ。……髪も綺麗な金髪ですし、微妙に目も蒼いし。羨ましい限りです」
「……ありがとう」
そう言って私が言うと、胡桃と苺が楽しそうに笑う。私も笑顔を作る。
私を抱き締めていた胡桃の腕の力がさらに強くなる。痛かったけど、少しだけ嬉しかった。
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