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そうしてじゃれているとチャイムが鳴った。時間ぴったりに羽山(私の担任)の注意が飛んできた。……うーん、普通は朝、先生って遅れてくるものじゃないだろうか?
「おーい。チャイム鳴ったぞ。席つけー」
皆が慌てて移動を始めたので激しく机の音が鳴った。
(う、る、さ)
たいしたことでもないのに何故だろう。今日はいやにそれが気に障る。軽く苛立ちを覚えたのだ。
「羽山って時間に几帳面だよね」
「そうね」
かすかな違和感は私が席についた瞬間に席が近い胡桃が話し始めたことにより忘れ去られた。羽山がジロリと胡桃を睨んだので彼女は慌てて前を向いた。
「んじゃあ、これからホームルームを始める。……今日は皆に吃驚なニュースがあるぞー」
えー、何々~? と嬉しそうな声が教室のあちこちからあがる。
私はさして興味もなかったので、さっきから気になっていた後れ毛を弄った。
(休み時間になったら直ぐにくくり直そう。邪魔だし、気になって仕方ないわ)
「さー何だろなぁ~。まず、今日の連絡事項から話します」
教室がざわついている。またもや胡桃がくるりと振り向いた。
「ね、有栖。ニュースってなんだと思う?」
「そうねえ……」
私は何だって良いのだけれど。
「ハイハイ、静かに~。そんなんじゃニュース聞けないぞ」
普段は羽山の言うことなんかちっとも聞きもしないくせに、クラスメイト達は静かになった。
しかしそれも束の間。窓際の少年が今日の羽山の切り札である“吃驚なニュース”を大声で告げてしまった。
「せんせー! 吃驚なニュースって、転校生!?」
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