420人が本棚に入れています
本棚に追加
ざわざわと教室の中がいっそう騒がしくなった。
(……日常から僅かな非日常へ……)
少し文学的なことを考えてみる。部活の誰だったかに薦められて読んでみたのだが、あまり面白くなかった小説の一文が不意に思い浮かんだ。喧騒の中、1人だけ興味なさげな私は周囲とは雰囲気が違った。
これではいけない、と思うけれどなんだか上手く気持ちを切り替えれない。こんなことは滅多にないのに。
(……転校生が一人来たくらいで私には関係ない。どうせ何も変わらない)
有栖の瞳に、陰が射す。
暗い暗い、蒼の輝き。
私に関係なく、世界は動く。でも今思えば、この転校生こそ、私の人生を大きく変える切っ掛けだった。
「バレちゃしょうがないな。おーい、知恵舎、入ってこい」
(チェシャ……?)
「はい」
不思議な響きの名前に、一瞬気をとられた。羽山の声に応じて、1人の人間が入ってくる。
(うわ……)
最初のコメントを投稿しよう!