このセカイ。

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 ざわざわと教室の中がいっそう騒がしくなった。 (……日常から僅かな非日常へ……)  少し文学的なことを考えてみる。部活の誰だったかに薦められて読んでみたのだが、あまり面白くなかった小説の一文が不意に思い浮かんだ。喧騒の中、1人だけ興味なさげな私は周囲とは雰囲気が違った。  これではいけない、と思うけれどなんだか上手く気持ちを切り替えれない。こんなことは滅多にないのに。 (……転校生が一人来たくらいで私には関係ない。どうせ何も変わらない)  有栖の瞳に、陰が射す。  暗い暗い、蒼の輝き。  私に関係なく、世界は動く。でも今思えば、この転校生こそ、私の人生を大きく変える切っ掛けだった。 「バレちゃしょうがないな。おーい、知恵舎、入ってこい」 (チェシャ……?) 「はい」  不思議な響きの名前に、一瞬気をとられた。羽山の声に応じて、1人の人間が入ってくる。 (うわ……)
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