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少女は、生まれた時からアリスだった。
それを少女が知っているかはともかくとして──少女は、アリスだったのだ。
『アリス』
呼び掛ける声も。この切り裂くような胸の痛みも。
全部、アリスのものなのだ。私が、少女が、アリスだったからなのだ。
「ねぇ、寂しいよ……」
少女は呟く。そして涙を流す。陽が当たらなくとも輝く蜂蜜色の髪が少女の幼い美貌をさらに際立たせた。
小さな足は傷だらけ。
そして心も傷だらけ。
その小さな足をこれ以上痛めても──少女は探す。彼を彼女を探す。心にぽっかり空いた穴を埋めるために探す。だって、
ひとりはさみしいから
「アリス」
呼び声に、少女は泣き濡れた顔をあげた。そこに立っているあなたは誰? だぁれ?
(Who are you?)
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