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──ねぇ、寂しいよ
幼い声が鼓膜を震わす。ここには居ないのに、確かに聞こえる。幼いながらも、その悲痛な声に、心が疼き出した。
「アリス、アリス、僕のアリス」
愛しいアリスが自分を呼んでいる。ひとりで悲しんでいる。そのことが彼の胸を締め付ける。
悲しいなら傍で慰めてあげたい。寂しいならそれを癒してあげたい。
まだ出逢ったこともない『アリス』にそんな気持ちを抱くのは、自分がチェシャ猫で、彼女を守る存在だからだ。
「アリス、アリス」
だから、この気持ちは本物ではない。自分のものではない。それでも構わないと、思ってしまう自分が少し腹立たしい。
──それでも、僕は彼女を愛している。
「僕のアリス」
(I want you.)
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