このセカイ。

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 朝7時。目覚めの時間。睡魔の猛攻により閉じてしまいそうな瞼を力を込めて開ける。布団がとてつもなく恋しかったが、今日は平日だから仕方がない。  「デザインが可愛い」とかなり評判なブレザーに袖を通し、ばしゃばしゃ顔を洗う。冷たい水の力でだんだん目が覚めてきた。ついでに寝癖も直してしまおうと、鏡を見る。 「あ……」  キラキラと陽光に輝く蜂蜜色の髪。深い翠の瞳。  英国人の祖母から受け継いだ(私はクォーターなのだ)髪と目を私は疎(うと)ましく思っている。  目を閉じる。  そして呪文を呟く。 「私は決して目立たない」  それからゆっくり目を開けて夜の間についた寝癖を直した。毎晩ちゃんと乾かしているのだが、どうしても朝にはついてしまう。  髪が軽くウェーブをしているのは仕方がない。直せない。生まれつきなのだ。  さっきの言葉は、呪いだ。私は毎朝自分に呪いをかけている。  理由? それはあまり言いたくない。強いていうなら、自分を守るため、かも。
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