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親には彼女とは別れたと言っていた。
これ以上彼女にも、彼女な親にも迷惑をかけたくなかったから。
「晃平、ちょっといい?」
母親が聞いてきた。
「あぁ、いいよ。」
答えて母親と顔を合わせる。
「晃平、まだあの子と付き合ってるの?別れたなんて嘘だよね?お母さんがどうして嫌だって言ってるかわからないんだよね。」
母親は泣きそうだった。
「どうしても付き合いを許してくれないん?」
いい機会だと思った。
「あんなに気が強くて、恋人の親にあれだけ盾突ける人、お前と付き合ってる間に他の男の人と出掛けて、バッグ買ってもらったり出来る人だよ?」
そう。
彼女はそういう人だった。
でも、全部自分がしっかりしてなかったからだって思ってた。
「あんたがしっかりしてないから、私は全然罪悪感とかない!」
彼女の行動に対して文句を言ったときに言われた言葉。
僕はなにも言えなかった。
自分が彼女に対してなにも出来なかったから。
それも仕方ないって思うしかなかった。
親には痛いところを突かれた。
逃げたい。
逃げたい。
ある日の夜。彼女からメールが来ても電話が来ても無視。
カッコ悪い現実逃避にネット。
そんな夜にね、ケンジサークルに一つのスレッドが立った。
さちぉ『恋をしたのかな?』
さちぉは同い年の大阪に住む女の子だった。
よく行くお店で見掛ける男性が気になるという内容だった。
「恋かぁ・・・自分がうまくいってないし、久々にマジレスしようかな。」
なんでもない感覚だった。
ただ単に、嫌な夜を越えられれば良かったから。
スピ『頑張って声かければいいよ!女の子に声を掛けられて嫌な気分になる男は少ないと思う。』
『声かけなよ!』
『さちぉはどんな感じの人?スペック希望』
『ちょっと自分が出来ないことを手伝ってもらう風を装う、イケる!』
どんどんレスが埋まっていく。
これでこの子の恋がうまくいったらいいな、なんて思った。
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