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電気の消えたある事務所に大きな悲鳴が上がった。
零時を当に過ぎた今、その悲鳴に気付く者はいない。
悲鳴と共にガタンッと大きな音を出して後ろに転ぶ男を上から見下ろしている者がいた。
その人物は、暗闇に混じる服に身を包みながらも、確かな存在感があった。
暗闇の中で見るその人物の眼が鋭く光った。
「ヒッ!あ、あんた…【漆黒の狼】か!?」
その男の質問に、黒尽くめの人物の口端が上がった。
その気配で、さらに男は恐怖で声を上げようとするが上擦る。
空想だと思っていた人物が目の前にいる。
架空の人物は確かにいたのだ。
その人物は、自分を殺しにきたと言わんばかりに、殺気を自分に向けて放ってくる。
「し…、死にたくない……っ!!お願いだ!助けてくれ……っ!!」
必死に泣きながら自分の足下に縋る男を、汚いものでも見てるかのように冷めた眼でみていたその人物は、初めて口を開いた。
「【生と死…お前はどちらを選ぶ…?】」
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